創傷の管理

1) 普遍的予防策の適用

  • 手袋、およびエプロン
  • ゴーグル/顔面シールド
  • 鋭利物の取り扱い上の安全性

2) 初期管理

  • 傷口に清潔な滅菌包帯、またはガーゼを当て、圧迫して出血をコントロールする
  • 血液が最初の包帯に浸透してきた場合、その上から新しい包帯を当てる。出血が続く場合は、その上にさらに重ねて包帯を当てず、付けていた包帯を取り外して出血点を確認し、そこを直接圧迫する
  • 可能であれば、傷口を高くする
  • それでも出血が続く場合は、近位の間接的圧迫止血法を検討する
  • 他の方法で出血が抑えられない場合、四肢の出血に対して止血剤の使用を検討する
  • 出血がコントロールできたら、遠位の血管、または神経損傷を評価する
  • 出血をコントロールできない場合は、できるだけ早く救急医療部門へ搬送する。収縮期血圧、または、橈骨動脈の触知不良を指標にし、蘇生に必要なIV静注経路を確保する
  • 生命を脅かす出血の可能性がある場合、TXA投与を検討する

3) 局所麻酔(LA)の原則

  • 同意:可能であれば、局所麻酔と傷の閉鎖処置に対して、プレーヤーの同意を得る(口頭、または文書で)。
  • 安全性:
    • アレルギー反応に注意する。
    • 最大許容投与量を計算する。
  • 投与:
    • 麻酔投与部位を確保し、アクセスできるように傷病者を配置する。
    • 小径の針を使用します(23、または、25ゲージ)。
    • 針を穿刺してシリンジに逆血がないか確認する。
    • ゆっくりと麻酔を注入して痛みを軽減します。抵抗を感じたら停止する。
    • M傷病者とはコミュニケーションを取りながら行う。
    • 麻酔の投与時間、投与部位、タイプ、局所麻酔薬の量を記録する。

4) 局所麻酔手技のタイプ

  • 局所浸潤麻酔
    • 傷口の近くに局所麻酔を注射する
    • 一般的な手技
    • 作用発現時間は1~2分
    • 作用時間は30~60分
    • 傷口がきれいな場合 –切り傷表面に局所麻酔を注射する
  • 周囲浸潤麻酔
    • 局所浸潤麻酔を術野の周囲に皮下浸潤させる
  • 神経ブロック
    • 局所麻酔を神経に注射して一時的に痛みをコントロールする。例: 指神経ブロック

5) 創傷の洗浄

  • 生理食塩水(セトリミド、または、クロルヘキシジンとの有効性は証明されていない)
  • 20mlシリンジと18g針を使用して高圧洗浄を行う
  • 通常の生理食塩水を大量に用いて洗浄する。「汚染の解決法は希釈することである」
  • 異物が埋め込まれている場合は、麻酔した創傷にブラシ、または、清潔な歯ブラシでこすって洗浄する

6) 閉鎖手技

  • 創傷の閉鎖の目的:
    • 合併症のリスクを最小限に抑制するための解剖的、および、機能的な組織の接合
  • 閉鎖してはいけない場合:
    • 受傷から6時間以上経過した創傷
    • 咬創など感染リスクのある創傷
    • さらなる審査を必要とする創傷
    • 頚部、胸部、腹部、会陰の刺創
    • 開放性骨折
    • 感染した関節上の創傷
    • 神経血管、および/または、腱の修正が必要となるほとんどの創傷
    • 専門知識を必要とする創傷 :瞼、唇、口腔内、指など
    • 急激な圧力による損傷、または、壊死組織、および、または、皮膚の消失
    • 湿らせたガーゼを当てて救急医療部門へ搬送する
  • 創傷の閉鎖手技(付録 1を参照)
    • 組織は十分な注意を払って取り扱う
    • 動脈出血に注意する
    • 縫合で糸を強く締めすぎないようにする
    • 伸展強度のある結節縫合の適用を検討する
    • 創傷の縁の外転を確認する
    • 多層縫合を適用しなければならない場合もある

7) 包帯

  • 必要時のみ使用する
  •  乾いた非接着性の包帯で創傷を覆う
  • 創傷がすべての方向で覆われているか確認する
  •  48時間後、または、感染の徴候があればすぐに包帯を確認する
  • 包帯のタイプ: 乾いた包帯、ワセリンガーゼ、抗菌包帯など
  • 包帯が創傷に貼り付くのを防ぐには、Jelonet(傷パット)、または、Inadineガーゼの使用を検討する

8) 破傷風予防接種の確認

  • これまでに5種の予防接種(乳児、幼児、14歳まで)をすべて受けている場合で、創傷が比較的清潔ならば、破傷風のブースター予防接種を受ける必要はありません。
  • すべての予防接種を受けていない、または、リスクの高い環境(汚れているラグビーピッチなど)での受傷であれば、汚染の程度と種類に応じて、ブースター予防接種または破傷風免疫グロブリンが必要になります。
  • 詳しくは、総合開業医(GP)、専門看護師、または、救急部門に相談してください。

9) 抗生物質の使用

  • ほとんどの創傷で必要ありません。
  • 念入りな洗浄、灌漑が最大の感染予防に繋がります。
  • 抗生物質の使用は次の場合に検討します:  咬創、穿通性の損傷、受傷から6時間を経過した創傷、口腔内の複雑な創傷、汚れや異物など状態の酷い創傷、適切に洗浄できない創傷、骨折を伴う創傷( 例: 指先)、リスクの高い傷病者(脾摘出術後)
  • 一般的な抗生物質 - Co-Amoxiclav(アモキシシリンとクラブラン酸の合剤)、Clarithromycin (ペニシリンにアレルギー反応を持っている場合)
  • 顔面損傷の場合は、局所用クロラムフェニコール 1% QDSを5日間使用。

10) 傷病者へのアドバイス

  • 最初の2~3日は、創傷を常に清潔にし、乾いた状態で維持する
  • 四肢損傷は、最初の24時間は高い位置に上げる

11) 創傷の再評価

  • 感染に発展する疑いがある創傷は、48時間以内に再評価する
  • 傷病者には、感染の徴候に気付いた場合はすぐに医療機関へ戻るように伝えておく

12) 縫合の選択と抜糸のタイミング

縫合の選択肢と抜糸のタイミングは、以下の表に示します。

部位 縫合およびサイズ 抜糸時期
頭皮 2/0 または3/0 の吸収糸 非吸収性   7日間
胴体 3/0 非吸収糸 7~10日間
四肢 4/0 非吸収糸 7~10日間
5/0 非吸収糸 7~10日間
5/0 または6/0 吸収糸 3~5日間
唇、下、口 5/0 または6/0 吸収糸  
膝、肘などの関節表面 3/0 非吸収糸 10~14日間
  • ここに示されている抜糸時期は、創傷の治癒、および、感染リスクの軽減を考慮した最適な推奨期間です。サポート活動(練習、試合)などがある場合は、縫合をそのままの状態にしておく場合があります(抜糸を次の試合の翌日に予定するなど)。縫合の状態は注意して監視し、感染の徴候が見られる場合は抗生物質の使用を検討します。
  • 抜糸は、滅菌したハサミ、または、「1回限りの使用」に限定された縫合糸カッターを使用して治癒した創傷を洗浄してから行います。糸は片側の皮膚に近い箇所で切って引き抜きます。感染リスクを軽減するため、皮膚の外側の糸が皮下を通過しないようにします。
  • 抜糸後は、2~3日間はステリストリップなどの接着テープを使用して、組織の治癒をサポートします。抜糸時に、縫合不全が見られるようであれば、すべて抜糸する前に代替治療を考慮します(ギャップはステリストリップで繋ぎます)。この手技を採用した場合は、感染の有無を評価します。