筋骨格評価

プライマリー・サーベイ

筋骨格損傷を負ったプレーヤーは、けがの状態、バイタルサイン、受傷機転に基づいて治療優先順位を決定します。現場の安全を確認してから、第1章に詳述されたABCDE原則に従って評価と管理を行い、速やかに生命を脅かす状態を認識して治療します。

S: Safety  安全なアプローチ

A: Airway  気道確保と脊椎のMILS(必要に応じて)

B: Brething  十分な換気を含む呼吸問題の管理

C: Circulation  循環と出血のコントロール - 重大な四肢損傷の可能性

D: Disablity  頭部損傷を評価して脳の二次損傷を最小限に抑える

E: Exposure  ABCすべてが管理できたら、損傷した四肢を管理する


気道、または、呼吸困難に関わる生命を脅かす損傷の管理は必ず、四肢の骨折よりも優先的に処置します。外出血で大量失血が認識された場合は、例外とします。生命を脅かさない外出血の確認と処置は、通常循環動態の評価をしながら行います。わかりにくい出血や四肢の変形は通常、プライマリー・サーベイ、または、セカンダリー・サーベイの脱衣の段階で認識されます。

未治療の四肢骨折箇所から大量出血と出血性ショックが発生する可能性があります。大腿骨の皮下骨折における失血は、1,000~1,500mlと推定され、開放骨折では失血量は2倍になります(Lee and Porter、2005)。

外出血のコントロールは輸液の前に行われるべきであり、継時的に経過観察されなければなりません。まず、滅菌包帯で直接圧迫し、四肢を高い位置に上げます。これで止血できない場合は、傷口に包帯を巻きます。出血を減少させるためのシンプル、かつ、重要な手技は、整復のための牽引です。神経血管の評価と再調整が終わったら、副木で骨折部分を固定し、その後で再び神経血管の評価を行います。

セカンダリー・サーベイ

プライマリー・サーベイでは、生命や四肢の重篤な状態を確認し、直ちに処置を開始します。セカンダリー・サーベイは、プライマリー・サーベイにおいて必要な蘇生措置が行われ、傷病者の容態が改善された後、必ず実施されるべきです。骨格筋損傷の評価は、「Lool(見て)、Fee(感じて)、Move (動かして)」という原則に沿って行い、受傷機転も同様に考慮します。下肢骨折/脱臼の徴候と症状は、次のとおりです:

  • 解剖学的変形
  • 痛み
  • 外出血
  • 腫脹
  • 触診時の圧痛
  • 捻髪音
  • 神経血管障害

骨折または脱臼が認識されたら、適切な管理を行います。プライマリー・サーベイでは、出血のコントロールと輸液を含む循環動態の評価を行いながら、ショック徴候が処置されなければなりません。フィールド上での下肢骨折または脱臼の処置においては、下肢の変形を確認して、副木が必要かどうかを判断します。神経血管の状態は、骨折部の牽引など、処置を施す前後には必ず評価されるべきです。四肢変形に伴う神経血管障害に対して、適切な鎮痛処置の後、可及的な整復操作が必要です。通常四肢の牽引は、近位方向への牽引を保ちながら(counter-traction)長軸方向へ行い、正しい位置(neutral position)へ戻します。整復後も、神経血管の評価を継続的に行います。神経血管性障害が見られる場合は、四肢を副木固定してプレーヤーをただちに対応可能な救急医療機関へ搬送します。アライメント後に神経血管状態に悪化が見られる場合は、四肢を元の位置に戻し、固定し、早急に救急医療機関へ搬送します。開放性骨折は、生理食塩水に浸した滅菌包帯で覆い、救急医療機関への搬送に時間がかかることが予想される場合は、予防的抗生物質の静脈内投与を検討します。

下肢骨折における病院前環境での管理のアルゴリズム(Lee and Porter、2005)は図 1を参照してください。

図 1:下肢骨折における病院前環境での管理のアルゴリズム
(Lee、C. and Porter、K.2005)

図 1:下肢骨折における病院前環境での管理のアルゴリズム (Lee、C. and Porter、K.2005)